1996/8/15  小林龍生 ホテルの和食料理屋


どこかのホテルのパーティの会場らしい。
のどの乾いた婦人がいて、彼女のために、仲居さんに水を一杯頼む。その水と一緒に請求書を持ってくるが、様々な項目が書いてあって、6万円あまりになっている。抗議をするのも大人げないのでそのままサインをする。
カウンターのようなところに女将がいて、「ご用の時はいつでも部屋を空けさせますので、お申し付けください」と、こびたようにいう。
同じホテルの中らしいが、座敷に家族と一緒に居る。テーブルには、貝割れに鰹節のかかった一皿と、ナスその他の野菜が載った一皿だけが出ている。何の料理に使うものか理解できない。
しばらく待っても、仲居さんは部屋にやってこない。案の定と、思いながら、女将を呼ぶ。長いこと待っているのに、仲居さんが来ないとクレームをつけると、女将は彼女たちの仕事はそんなことではない、と言う。切れそうになるが、こらえて、家族と一緒に席を立つ。
「安くて真心がこもっていてうまいものを食べさせる店は、他にたくさんある。請求書は送ってもらって結構です。子供たちへの、教育だと思えば安いものです。しかし、矜持を持つことと驕り高ぶることは異なります。それから、何らかの形で、今回のことを文章にして発表させてもらいます。」

(ここで、眼が醒めた。真夏の暑い日の夜。まだ、12時を少し回ったところだったので、階下に降りて、記録にとどめた。)


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