作品解題


連画「私の輪郭」は、詩歌からイメージへと受け継がれる電子的な対話の試みである。 1995年の暮、俵万智、中村理恵子、安斎利洋の3人によって編まれたこの作品は、正月を詠んだ次の三首が電子メールによって中村と安斎に届けられたところからスタートする。


俵万智

初恋の人の名前を思い出す年に一度の「お元気ですか?」

せり、なずな・・・七つの草に忍ばせて伝えてみたき言の葉がある

祈願終えて春の光を踏みゆけば少し濃くなる我の輪郭


中村理恵子
青い人−ひざしの温度

「春の光を踏みゆけば、少し濃くなる我の輪郭」に着想を得た中村は、まだ弱い春の日差の中に立ち「少し濃くなる」と感じている人物とその影のイメージを、強い色彩と直角の構図で表現した。

安斎利洋
私の光る髪

春の光を背後にうけて、自分の影を地面に見ている人。その人物を前面から眺めたら、逆光によって照らしだされた髪の輪郭が、美しく光るに違いない。

中村理恵子
ふたり

熱いハートを抱いた人物が、もう一人配される。輪郭の周囲は、オーラのような色彩がただよっている。

安斎利洋
眼が@

右側の人物の、大きい眼を活かした肖像。キーボードのPの隣にあるアットマーク(@)のような、くりくりした眼がすてきだ。

中村理恵子
デジタルな微笑み

肖像を左右反転してみたら、お馴染みの「モナリザ」が見えてきた。インターネット上の美術館 WebMuseum, Paris からジョコンダを連れてきて、重ねてみた。

安斎利洋
マドモアゼル・リサの部屋

モナリザ(マダム・リサ)を、ちょっと若返らせて、マドモアゼル・リサに。服装も変え、背後に広がるあの荒涼たる風景から、あたたかい室内へ連れてきた。




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