□■連画とは■□



「"連画" (linked image) は、CG作品を電子ネットワークを通して送りあい、相手の作品を引用したり直接手を加えることによって新しい作品を作り、組作品を成長させる創作システムである。」


「まずAがきっかけになる作品を完成させ、それをBに電子メールで送る。Bは、Aの手元の作品と完全に同じディジタル画像のコピーを受け取る。Bはそのデータをベースに、一部を加工したり、引用したりして、B自身の作品を完成させ、再びAに送り返す。このやりとりを繰り返すことによって、絵巻物のような作品の鎖を作れるはずだ。私はこの方法を、中世に流行した和歌の集団創作ゲームである連歌の発音に倣って連画と名付けた。」[安斎利洋「ノート」より]


 1992年の第1回目のセッション『気楽な日曜日』に始まる数々の「連画」の試みは、安斎利洋と中村理恵子の二人による「連画」から少人数/多人数の「連画」への可能性を探り、また国内だけでなく、ネットワークの特性を十分に活かせる国際的な「連画」へと展開していった。さらにその創作システムは「教育連画」や「触覚連画」といったさまざまな分野への広がりを見せ、貪欲なまでの探究が続けられている。(事例:1998年1月1日、朝日新聞正月特集に掲載された『未来の標本箱』。各界の著名人10人による短歌と安斎と中村の連画による全6作品からなる)


 アンドゥ(やり直し)が効くデジタル作品であるが故に許される、他者の作品に手を入れるという行為を通じて「連画」に参加する者は、電子ネットワークとコンピュータに基づいたビジュアルコミュニケーションの中で、自分の作品が他者の作品の中に融け込んでゆくことの心地よさや、創作する自己の中にある他者の影響の大きさなどを体験することになる。


 これらの実験的創作活動を通じて安斎利洋と中村理恵子はその思想と創造性を深化させてきた。「連画」が国際的に認められている理由はまさにそこにある。そしてこの「連画」システムは、そこに参加する誰でもが、他者とリンクされることによって、半ば必然的に自らの可能性を押し広げることになるようなシステムなのである。


 そうした意味で「連画」はあらゆる人に開かれたシステムとして今後もさまざまな方向に展開してゆくことになるだろう。「『連画』は、アート、電子ネットワーク、マルチメディアという3つの糸の絡まるところに生まれたデジタルメディア時代ならではの創作装置」なのである。